講演会「雷をひもとけば」が開催されました
7月8日 (月) 2講時 (10:45-12:15) に,7-302教室にて,電力中央研究所 名誉研究アドバイザー 新藤 孝敏 氏を講師に,講演会「雷をひもとけば」が開催されました.一般からの来場者とともに,本コースの2-4年次の学生が聴講しました.
講演は,(1)雷の発生メカニズム, (2)東京スカイツリーでの観測事例の紹介,(3)雷から建物や人体を守るには といった構成で進行しました.
(1) 雲の中にある氷の粒同士が擦れることにより電気を帯びて落雷に至ること,その一瞬の0.1ミリ秒の中でも,空中から数十mずつ進んでは止まることを繰り替えて地面に接した瞬間に地上からの放電が起こるという過程があることを高速カメラによる映像を交えつつご教示くださりました.ハタハタと呼ばれる魚は鱩とも表記され,秋田県の県魚であり,冬に旬が来る魚がありますが,その漢字表記が示すように,冬に湿り気を帯びる日本海側では夏でなくても雷が起きることをご紹介いただきました.
(2) 雷の大きさは千差万別であり,落雷箇所の予測が困難です.ここでは,ご自身の携わった研究課題として,東京スカイツリー等での定点観測についての事例をご紹介くださりました.観測手段としては,前述にあるように高速度カメラを用いたもの,スカイツリーにコイルを巻きつけて,落雷に伴う電流を検出するもの,ならびに放射される電磁界の変化を,赤城,我孫子および横須賀で観測し,落雷位置を推定するものがある旨を挙げていただき,それぞれ詳しくお話し下さりました.スカイツリーへの落雷は必ずしも最頂部とは限らないことや,高速度カメラで捉えた雷の発生過程に意外なものがあったというお話が印象的でした.
(3) 東京スカイツリーの足元には浅草がありますが,浅草寺には雷門や,例年7月9・10日に催される四万六千日の縁日での雷除けなど,雷にちなんだものが多くあります.落雷の位置を予測することは困難であっても,安全への対策は経験的に分かってきております.まず急な雨などで木の下に雨宿りすることは得策とは言えません.新藤氏は,木への落雷が地面にたどり着く前に人体に伝わるという側撃が起こること,側撃は木から3m程度離れると起こらなくなることを実験で検証したことをお話し下さりました.おわりに,避雷針は雷を回避するためのものではなく,建物の破壊を防ぐためのものであること,雷のような大きな電流のもとでは,電流を通しにくいビニール製の雨合羽を着用したからといっても効果がある訳ではなく,鉄骨が用いられた建物への避難が安全であることなど,雷にまつわる ありがちな誤解を解消するとともに,安全に回避するための方法をご教示くださりました.
全体を通して,ユーモアを交えながらの講演で,盛況のうちに終えることができました.